湖沼流域ガバナンス研究成果一覧
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ILBMの実践課題
"ILBM"は、6つの要素からなるが、それぞれが独立して機能するというよりも、相互に補完しながらそれぞれが強化されていくものである。今後さらに"ILBM"を有効な枠組みに発展させていくための課題として以下のようなものが挙げられる。

1 流域に最適な"ILBM"の構築

  • 世界には自然条件だけでなく、文化・歴史・民族、社会・経済的条件などがさまざまなに異なる流域があり、それぞれに最適な"ILBM"がある。
    流域は多くの場合複数の行政区画からなる場合が多く、国、州政府、地方の行政府など関係する行政機関の協働的な取組みが必要となる。さらに行政府内における異なる担当部所間の調整も重要である。(フィリピンのLLDA、オーストラリアのMurray-Darling河川流域、琵琶湖・淀川流域など)
  • 流域内に地理的・社会経済的に異なる支流域を有する場合は、異なる利害関係者間の統合だけでなく、異なる支流域間の統合的な管理が必要となる。(インド・Ujjani 貯水池流域)
  • 越境水域・流域や国際的に重要な流域の管理には関係国の協同的な取組みが必要であり、そのための仕組み作りと国際的な支援体制が重要である。(ロシアのバルト海、ロシア・エストニアのペイプシ湖、メキシコのチャ パラ湖など)

2 社会基盤・法整備

  • "流域"という概念は、従来の社会的な枠組み、法整備の点にはまだ"なじみ"の薄いものであり、1)"流域" 概念の確立、2)"水"・"環境"権に関する合意、3)流域における"住民参加"と"意思決定"の仕組み作り、などが今後の課題である(渡辺)。
  • 湖沼流域の総合的な水管理には、水資源からの直接的な水の利用だけでなく、物質の生産とその移動(仮想水)も考慮して流域全体の最適化を考えることが必要である(井手)。
  • 社会を変えていく上で教育はその基本である。地域・流域の特性や社会経済的な条件に対応した環境教育の実践が望まれる(川嶋、遠藤)。

3 科学・技術の有効活用

  • 陸水学的なデータは水資源管理の基礎であり、水の収支バランスを無視した過剰な水利用は湖の崩壊を招く(アラル海の消滅)。
  • モニタリングは流域の健康度を評価し、政策対応の基礎となるもので継続的に行なうことが重要である。また技術的な進歩により、重要な知見が得られるようになった(清水)。しかしながら測定場所や時期などによって異なるので注意が必要である(Dongil Seo)。また湖の評価基準は目的によっても異なるので、いろいろな手法と尺度で総合的な判断を下すことが望ましい。
  • モデリングは将来を予測し適切な対策を取る上で重要な役割を果たすが、流域の全体像を予測することは現状では難しい。目的に対応したいくつかのモデルが開発されているので、限界を知ったうえでうまく使いこなすことが重要である (SWATモデル:宗村、 Dongil Seo)。
  • 湖とその環境をさらに汚染しないための技術的な対応が必要である(廃棄物処理、下水処理など)。特に環境にやさしい技術(EST)の適用は、環境の悪化を抑え、環境にやさしい再生を可能にする。また技術の適用に当たっては、環境技術評価などのアセスメントが必要である(UNEP-IETC)。
  • GISは、地理情報とさまざまな情報を組み合わせることによって、流域の範囲を正確に把握し、流域内での事象とその相互の影響などを視覚的に表現できるので、政策立案の基礎情報として、また情報の共有にとって有力な手法である(Ballatore、清水、他)。
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